こまったさん全10巻と人気レシピ再現|読む順番やわかったさんとの違いを解説
1982年の第1巻刊行以来、世代を超えて読み継がれている童話の名作「こまったさん」シリーズ(あかね書房)。口癖のように「こまった、こまった」とつぶやきながら、いつの間にか不思議な世界へと迷い込み、気がつけばおいしい料理を作り上げてしまう主人公の姿に、幼少期の胸を高鳴らせた記憶を持つ人は少なくありません。親となった今、自分の子どもへと読み聞かせたり、大人目線で作中の料理を台所で再現したりするムーブメントが続いています。
寺村輝夫氏の軽妙な語り口と岡本颯子氏の愛らしいイラストが織りなす本シリーズは、単なる読み物の枠を超え、子どもの「やってみたい」という自立心を育む食育のバイブルとしても評価され続けています。本稿では、全10巻のあらすじやおすすめの読む順番、姉妹シリーズ「わかったさん」との構造的な違い、さらにはSNSや家庭で大人気の再現レシピの調理ポイントまで、徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 全巻構成と読む順番:全10巻は1話完結形式のためどこから読んでも楽しめ、対象年齢は小学校低学年(6〜7歳)前後が最適。
- わかったさんとの違い:こまったさんは「家庭料理(日常のごはん)」と「花屋の奥さん」、わかったさんは「お菓子」と「クリーニング屋の女の子」が舞台。
- 再現レシピの真髄:カレーやオムレツなど、作中に散りばめられたリズミカルな呪文調の調理工程には、料理の科学と段取りの本質が凝縮されている。
【シリーズ全10巻一覧】『こまったさん』の読む順番とあらすじ・対象年齢
あかね書房の「おはなしりょうりきょうしつ」シリーズとして誕生した『こまったさん』は、全10巻で完結しています。駅前商店街の花屋を営む「こまったさん」が、日常のささいなハプニングをきっかけに突如としてファンタジーの世界へトリップし、出会った不思議な動物や人物とともに料理を完成させて元の世界へ戻ってくる、というのが基本プロットです。
結論から言うと、どの巻から読み始めてもまったく問題ありません。各巻が独立したエピソードで描かれているため、子どもが「今日食べたい料理」や「表紙のイラストの好み」を基準に選ぶのがもっとも読書意欲を引き出すアプローチです。出版社が設定する対象年齢は小学校低学年(6〜7歳以上)ですが、すべての漢字にふりがなが振られており、年長児への読み聞かせから一人読みへの移行期に最適なテキストとなっています。
| 巻数・タイトル | 刊行年 | 作中の主役料理とあらすじの要点 | おすすめの読書シチュエーション |
|---|---|---|---|
| 第1巻 こまったさんのスパゲティ | 1982年 | 不思議なアフリカの草原へ迷い込み、お腹をすかせた動物たちとミートソースを作る原点。 | シリーズ初読時の入門編に最適 |
| 第2巻 こまったさんのカレーライス | 1982年 | 突然キッチンが船になり、船員たちとスパイシーな本格カレー作りに挑戦する大冒険。 | 料理の手順を論理的に学びたい時 |
| 第3巻 こまったさんのハンバーグ | 1983年 | ひき肉をこねる工程がダイナミックに描かれ、お化け屋敷のような空間でハンバーグを焼く。 | 手先を使ったクッキング前の予習に |
| 第4巻 こまったさんのオムレツ | 1983年 | 卵の割り方からフライパンの扱いまで、プレーンオムレツの黄金比と技術を学ぶ名作。 | 卵料理の基礎を身につけたい時 |
| 第5巻 こまったさんのサラダ | 1984年 | 野菜嫌いを克服するヒントが満載。ドレッシング作りの基本比率を楽しく覚えられる。 | 火を使わない安全な調理体験に |
| 第6巻 こまったさんのスープ | 1984年 | 冬の夜に読みたくなる温かいスープ。コンソメやポタージュの旨味の引き出し方を解説。 | 寒い日の読み聞かせと夜ごはん作りに |
| 第7巻 こまったさんのサンドイッチ | 1985年 | パンにバターを塗る理由や具材の重ね方など、ピクニック気分で学べる構成。 | 休日のお出かけ前のお弁当作りに |
| 第8巻 こまったさんのコロッケ | 1986年 | ジャガイモを潰して衣をつけ、油で揚げる一連のプロセスがテンポ良く展開。 | 少しステップアップした料理に挑む時 |
| 第9巻 こまったさんのラーメン | 1987年 | スープのだし取りから具のトッピングまで、子どもが大好きなラーメン作りの裏側を描く。 | 麺類作りの段取りを理解したい時 |
| 第10巻 こまったさんのグラタン | 1988年 | ホワイトソース(ベシャメル)をダマにせず滑らかに仕上げるコツを魔法のように伝授。 | 本格的な洋食調理の達成感を味わう時 |
【徹底比較】「こまったさん」と「わかったさん」の決定的な違いとは?
児童書コーナーで必ず並んで置かれているのが、同じく寺村輝夫・岡本颯子コンビによる『わかったさん』シリーズ(おはなしわかしシリーズ・全10巻)です。両者は姉妹シリーズとして知られていますが、作品のテーマや主人公の立ち位置には明確な住み分けがなされています。
両シリーズの決定的な相違点は、扱っている料理のカテゴリーと主人公のキャラクター設定にあります。
- テーマの違い:こまったさんは毎日の夕食やお昼ごはんに登場する「本格的な家庭料理(洋食・主菜中心)」を扱うのに対し、わかったさんはクッキーやシュークリーム、プリンなどの「お菓子・スイーツ作り」に特化しています。
- 主人公と生活環境:こまったさんは花屋の若奥さんで、夫のヤマさん(タクシー運転手)や愛犬のムノくんと暮らす大人の女性です。一方、わかったさんはクリーニング屋の娘で、少しおしゃまな少女として描かれています。
- 物語の導入部:こまったさんは「こまった、こまった」と困惑する状況から異世界へ引っ張り込まれるのに対し、わかったさんは「わかった、わかった」と安請け合いしたことから不思議なトラブルに巻き込まれていきます。
家庭料理の段取りや火・包丁の扱いを感覚的に学びたい場合は『こまったさん』、計量の正確さやお菓子作りのワクワク感を味わいたい場合は『わかったさん』を選ぶのが、読書体験としても料理実践としても最も理にかなっています。
【再現レシピ検証】作中の名料理を大人になった今こそ作る実践ガイド
子どもの頃、岡本颯子氏の描く温かみのある挿絵を見て「どんな味なんだろう」と喉を鳴らした読者は多いはずです。作中で語られるレシピは、単なるおとぎ話の演出ではなく、プロの調理理論に裏打ちされた極めて実用的なレシピとなっています。現在、大人の読者がキッチンで再現する際に役立つ、主要4作品の調理ポイントを検証します。
1. 『こまったさんのカレーライス』:飴色玉ねぎと隠し味のセオリー
作中で強調されるのは、「玉ねぎをとにかく薄く切り、バターでじっくりと炒める」という基本です。船の厨房で巨大な鍋をかき混ぜるシーンでは、香辛料を炒めて香りを立たせる手順や、すりおろしリンゴを加えてフルーティーな酸味と甘味を足す工程が描かれています。市販のカレールーを使う場合でも、玉ねぎの水分を極限まで飛ばして甘味を引き出すという工程を忠実に守ることで、驚くほどコク深い本格洋食カレーが完成します。
2. 『こまったさんのオムレツ』:手首のトントン運動と火加減
シリーズ屈指の人気作である『オムレツ』は、洋食の最難関技術を驚くほどシンプルに言語化しています。卵をボウルで溶きほぐす際の白身の切り方、バターがフツフツと泡立った瞬間を見逃さない投入タイミング、そして「フライパンの柄を手首でトントンと叩いて卵を巻き上げる」動作までが、リズミカルな台詞として記されています。テフロン加工のフライパンが主流となった現在でも、強火で一気に半熟を作り、余熱で形を整えるセオリーは完全に一致しています。
3. 『こまったさんのスパゲティ』:香味野菜のソテーと煮込み
第1巻に登場するミートソーススパゲティは、にんにく、セロリ、にんじん、玉ねぎを細かく刻んで炒める「ソフリット」の技術がベースになっています。ひき肉をしっかり焼き付けてメイラード反応を起こしてからトマト缶とローリエを加えて煮込む工程は、現代のイタリアンレシピと寸分違わぬ王道の手法です。
4. 『こまったさんのハンバーグ』:氷水で冷やしながら練り上げる肉汁保持術
ハンバーグの巻で語られる重要なポイントは、ひき肉の温度管理とパン粉を牛乳にしっかり浸す下準備です。肉の脂が体温で溶け出さないよう手早く練ること、両手でキャッチボールのように空気を抜いて成形することなど、ジューシーなハンバーグを焼くための物理的ルールがストーリーの中に自然と組み込まれています。

【実態検証】読者の生の声と令和のファンを魅了するグッズ・復刻展開
出版から40年以上が経過した現在、あかね書房公式の『こまったさんのレシピブック』シリーズの発売や、ポップアップストアでの公式グッズ展開が活況を呈しています。SNS上や読書コミュニティでの反響を分析すると、熱心なファン層のリアルな姿が浮かび上がってきます。
SNSやレビュープラットフォームに寄せられた声の傾向を見ると、大きく分けて2つの潮流が存在します。
- 20代〜40代のノスタルジーと実用性:「子どもの頃に読んで人生で初めて作った料理がこまったさんのオムレツだった」「文房具やトートバッグなどの公式グッズを大人買いしてしまった」といった、幼少期の原体験と結びついた消費行動が目立ちます。
- 親子2世代での読み継ぎ:「自分がボロボロになるまで読んだ本を、今度は自分の子どもが目を輝かせて読んでいる」「読んだその日の夕飯を子どもと一緒に作るのが定番の週末イベントになった」という、食育を通じた世代間コミュニケーションツールとしての利用です。
あかね書房の企画担当者による発信や公式展示会では、岡本颯子氏の描くどこかユーモラスで温かい原画プリントのポーチ、エプロン、食器類が即完売するなど、昭和・平成カルチャーのリバイバルという枠にとどまらない、確固たるブランド価値を証明しています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
ロングセラー作品ゆえに、ネット上や保護者の間ではいくつか事実と異なる誤解が散見されます。正しい知識を持つことで、作品選びの失敗を防ぐことができます。
誤解1:「シリーズの順番通りに1巻から読まないと話が理解できない」
これは完全な誤解です。前述の通り、各作品は独立した短編であり、登場人物の人間関係に複雑な連続性はありません。第1巻『スパゲティ』を読まずに、子どもの好物である『ハンバーグ』や『ラーメン』から入っても全く支障はなく、むしろ興味のある料理から入る方が読書習慣の定着につながります。
誤解2:「作中のレシピは子ども向けの簡易版でおいしくない」
これも大きな誤りです。寺村輝夫氏は食通としても知られ、作中の料理描写は洋食の伝統的な調理法に極めて忠実に書かれています。分量こそ物語のテンポを重視して細かくミリグラム単位で記載されていない箇所もありますが、「料理の工程においてなぜその作業が必要なのか」という本質的な理由が描かれているため、大人が本格的な食材で作っても絶品の仕上がりになります。
【プロの結論】食育心理学と物語体験が育む「子どもの自己効力感」
児童心理学および食育の観点から見ると、『こまったさん』シリーズの最大の功績は、調理を「作業」ではなく「日常の延長にある冒険」として再定義した点にあります。
こまったさんは完璧なスーパー主婦ではありません。いつも何かに困り、戸惑いながらも、目の前の食材と向き合い、できることを一つずつ積み重ねておいしい料理を完成させます。この「不完全な主人公が困難を乗り越えておいしさにたどり着くプロセス」を目撃することが、読んでいる子どもたちに「自分にもできるかもしれない」という強い自己効力感(Self-efficacy)をもたらします。
【おすすめできる家庭・読者】
- 絵本から文字中心の幼年童話へスムーズにステップアップさせたい家庭
- 子どもに「食」への興味を持たせ、台所仕事のお手伝いを自然に促したい保護者
- 80年代の良質でレトロなイラストや、どこかシュールで温かいファンタジー世界が好きな大人
【別の選択肢を検討すべきケース】
- 計量スプーンや温度管理など、厳密な数値レシピ本を求めている場合(物語よりも実用クッキング本が適しています)
- 完全なリアリズムを求め、ファンタジー的な飛躍(動物が喋る、キッチンが船になる等)に馴染めない子ども

【こまったさん】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:こまったさんの旦那さんや飼い犬の設定はどうなっていますか?
A1:夫の名前は「ヤマさん」で、普段はタクシーの運転手をしています。愛犬の名前は「ムノくん」です。ヤマさんがお腹をすかせて帰宅するのを待つシチュエーションや、ムノくんが巻き起こすハプニングが冒険の引き金になることが多く、家庭的な温かさを支える重要なキャラクターです。
Q2:大人向けのレシピ本や公式グッズは現在どこで購入できますか?
A2:あかね書房から刊行されている『こまったさんのレシピブック』シリーズは全国の書店やオンライン書店で購入可能です。キャラクターグッズや文房具は、全国の大型書店内の特設コーナー、絵本グッズ専門店、または期間限定のポップアップストアや公式物販サイトで展開されています。
Q3:何歳くらいから一人で読めるようになりますか?読み聞かせのコツは?
A3:小学校1〜2年生(6〜8歳)であれば、すべての文字にルビが振ってあるため一人読みが十分可能です。就学前の年長児(5〜6歳)へ読み聞かせをする際は、作中に出てくる「たまねぎを トントン」「ジュージュー パチパチ」といったオノマトペや歌うようなリズムの部分を感情豊かに読むと、子どもの想像力がより刺激されます。
まとめ:世代をつなぐ「こまったさん」の温もりと色褪せない食の魔法
1980年代に誕生した『こまったさん』シリーズが、令和の現在に至るまで全く古びず、多くの人々の心をつかんで離さないのは、そこに「おいしいものを作って大切な人と食べる」という人間の普遍的な喜びが描かれているからです。
寺村輝夫氏の紡ぐリズミカルな言葉と、岡本颯子氏の描く温かみのある世界観は、デジタル画面に囲まれた現代の子どもたちにとっても新鮮な感動を与えてくれます。本を開いて物語のファンタジーに浸り、読み終わったら一緒にキッチンへ立ってフライパンを握る――そんな豊かな読書と食の体験を、ぜひ家庭の中で味わってみてください。 (出典: こまっ た さん(Yahoo!ニュース))